chapt.-1 思い出に縋る私は滑稽だったでしょうか。十余年の人生をピアノと共に生きてきた。私の価値を決めた音楽を私は厭わしくは思わないけれど、いっそ剥ぎ取ってしまいたいと感じていたのは、生身の私をあなたが愛してくれるかどうかを知りたかったからだ。私を奇跡のようだと言ってくれたあなたは、けれど何もかもを失った私をそうと知った瞬間、その皮膚から削ぎ落とそうとしたね。私は今もあの春に縋りついている。死にかけた私を見つけてくれたあなたを、今もまだ愛している。 PREV BACK NEXT